会話

子供のころから人の話を聞くのが苦手だった。聞き間違いや聞き取れない事が多く、意味を理解するにも時間がかかったり誤解することも多い。何度も聞き返すが、3度ほど聞き返しても駄目だったときは適当な笑顔で誤魔化している。でなければ「もういいよ」と言われて愛想を尽かされる。
今でもそう。
だから授業なんてまったく聞かず、テストの時には自然と耳に残ったそれらしい単語を推測を交えて解答欄に書いていた。
意味はあまり理解していなかったがなぜか正答率は高かった。
中学生になって、テストは事前に勉強して備えるものだと知った。それでも、あいかわらず授業は聞かず、勉強は一人で教科書を読むことで進めていた。
今までずっとそうしてきたし、勉強においてはそれで困ることもなかった(点数も悪くはなかった)。困ったのは人付き合いだ。聞き取れないときは、とりあえず適当な作り笑いで誤魔化しているが、皆が笑っているときに自分だけ意味が分からず作り笑いをするというのは結構つらい。

でも、自分のこの癖がそれ以外でも困ったことになっていることに気づいたのは、卒業研究を始めた頃だ。
研究内容について議論ができない。何を言っているのか聞き取れてない。聞き返すべき事が多すぎて聞き返しそびれてしまう。当然、どの本にも今の議論については載っていない。話を聞き取って、内容をその場で学習して、議論を進める事ができない。
もともと聴覚処理が苦手だったことに加え、それを改善することを考えず、文書による学習一辺倒だったため、会話による理解力が人と比べて劣ったままになったんだと思う。
現在、社会人になり、本格的に困ったことになっている。

人の音声指示を理解することの重要性に今まで気付かなかった俺はどんだけバカなんだ。